レガシーとの戦い〜投資銀行フィンテック部の現場から
あなたが思ってるほど、フィンテックは楽しいものじゃない。現場はもっと混沌としている。
ペンタゴンにはフロッピーがまだ残ってるって?悪いがここじゃよくある話だ。
フィンテックってのはレガシーを駆逐するか、俺らが食われるかっていうジハードなんだ…!
今回は、今までに僕が経験してきた「レガシーとの戦い」をご紹介したい。
プリンタ付き電卓とエクセルの戦い
彼女は執拗にプリンタ付き電卓にこだわり続けた。
「あたしにはね、こっちの方がいいのよ」そういって彼女はバチバチと電卓を弾いた。彼女の電卓はレシートのような紙がはみ出ていて、計算結果を印字することができる優れものだ。70年代に登場してから、いまだに販売されている。
▼こうゆうやつ
彼女はエクセルの計算結果に懐疑的で、よく電卓で答え合わせをしている。
「エクセルは完璧ではないから、気を付けた方がいい」と僕にアドバイスをくれた。
ありがとう。その通りだ。Sheft+F9を知らない人もいるからな。
このババアの定年まであと数年だ。
ロータスノーツとアウトルックの戦い
「機能が多すぎて意味がわからない」部長はいつも僕にアウトルックの操作を聞いてくる。「間違えて変なボタンを押しそうで怖いんだよ」と語る部長はロータス世代の人間だ。
かつて、ロータスノーツというIBMアプリケーションがあったのだ。特に官公庁や金融機関で多く採用され、都市銀行はすべてロータスユーザーだった。
今ではほとんどアウトルック・Gメールに置き換えられたが、いまだにIロータスはBMに数億ドルの売上をもたらしている。
当社では最近になってロータスは駆逐されたが、アプリケーション自体はまだ残っている。
「あれっ、ロータスで会議室の予約したはずなのに」部長はいまだにロータスの呪縛から逃れられない。
「部長、それアウトルックでできますよ」
「ロータスでできるのになぜわざわざ別のソフトに変えるんだ!」
なぜか怒られた。
チャット機能やクラウドストレージ/ノートを連携させるなんて夢のまた夢だ。
メガバンクの残高照会の戦い
企業であれば、銀行の残高は毎日チェックするだろう。この度、そうした単純労働はすべてベトナムに委託することになった。我々はフィンテックで忙しいのだから。
メガバンのシステムは英語に対応していないが、運よく日本語ができるスタッフをハイアーすることができたしスムーズに業務移管ができると思われた。これでフィンテックに集中できるぞい。
しかし、このささやかなリソース確保も空しく、並行稼働初日にトラブル発生。
「ハロー、ミスターベスト」ベトナムからのコールだ。「ファイルが壊れている」
運用部隊総出でデータの確認をした。問題ないぞ。ベトナムは正常にデータを取得できているはずだ。何があったんだ??
原因は憎き半角カナであった。銀行からのダウンロードデータは半角カナなのだ。
当社のプレミアもののMS-DOSが受信した半角カナは、ベトナムの最新中華コンピュータでは再生できなかったのである。Windowsェ…文字コードェ…メガバンェ!!!!
霞が関との戦い
フィンテックを推進するにあたって欠かせないのが政府との連携だ。フィンテックについては、政府も他国に負けまいと息巻いている。ありがたいことだ。
先日は○○庁から電話があった。規制緩和に伴い、提出書類のファイル形式がいろいろ変るらしい。良い取り組みだと思う。紙は撲滅して、IT化しましょう。
それでは、メアドいただいていいですか。メールをお送りしてエビデンスとしたいのですが
「うちはメールできないんですよぉ」
はて。
「セキュリティの関係で。外部と連絡できる端末は一応あるんですけど、本当に緊急用なので」
メアドゲットならず。遠回しにお断りされる一番キツイパターンだ。ぐぬぬ。
はたしてフィンテックの時代はやってくるのだろうか。
今日も戦いは続く。