金融機関にとってのブロックチェーンとは何か、デスマーチは終わるのか
ブロックチェーンによって金食い虫システムが消えるとか、デスマーチが終わるなんて話は僕にはピンとこないです。なぜならブロックチェーンとレガシーシステムは完全に別問題だからです。
それを説明するために、今の金融システムはどのようになっているのかをザックリ説明したいと思います。
ブログにしては長い文章かもしれませんが、最後には、ブロックチェーンが金融機関にどのようにベネフィットをもたらすのかがわかるはずです。
金融機関は今でもメインフレーム
まず、ほとんどの金融機関が「メインフレーム」をベースにしています。80年代に普及したもので、難しい説明を省くと業務用ファミコンみたいなもんです。画面も8ビットな感じです。
見た目だけではありません。ファミコンが様々な遊びを駆逐したように、メインフレームもまた、たくさんのソロバンを駆逐したのでした。
世界的にはIBMがトップシェアですが、当時は日本メーカー全盛期だったので日立やNEC、富士通などの日系メインフレームもたくさん登場しました。
その上にNRIやNTTや、国内外のベンダーが作ったパッケージシステムが山ほど乗っています。
さらに、非常用の冗長化・セキュリティ対策・海外アウトソーシング、陳腐化などによって、もはや誰もコントロールできていないというのが現状です。
メガバンのシステム
ちなみに三菱はIBMのメインフレーム、三井住友がNEC、みずほは富士通と日立の両方を使っています。
世界的・全国的金融インフラへの対応
次に、金融システムにまつわる外部環境について説明します。
世界を繋ぐ金融通信網―SFIWTというものがあります。HTTPのような、通信プロトコルを飛ばして送金したりするわけです。 https://www.swift.com/ja
同様に、日本国内では全銀ネットという通信網があります。そのうち、日銀とやりとりするものは日銀ネットで処理されます。さらに都銀ネット、地銀ネット、信金、信託…ネットワークがたくさん!
というわけで、金融システムは様々な通信ネットワークに対応する必要があるのです。
ネットワーク規格
通帳に記帳すると半角で「フリコミ」と印字されますよね。あれもネットワークの規格に準拠するためのものなのです。
必ず経由する、清算機関とは
金融機関同士の取引は信用問題です。「明日200億円送金するわ~」ってSWIFTに書いてあっても信じられないじゃないですか。実物の札束を渡すわけじゃないですから。それに、カネもモノ(金融商品)も生ものなので、一瞬で価値が変わります。
そんなわけで、必ず第三者機関を通して取引のが一番公正かつ安全なのです。
清算機関(クリアリングハウス)と呼ばれ、ブリュッセルのユーロクリアやアメリカのACH、日本ではほふりが有名です。
専用端末というアンティーク
ちなみに僕のデスクには、それら清算機関と接続された専用端末があります。
専用端末ですから、僕のPCと接続することはできません。データを取り出したいときは少し厄介です。。多くは語りませんが、フロッピーという記録媒体がとても便利です。
業務別システムとファミコン
実際にはさらに、業務ごとのシステムが必要ですが、エンティティや業務によりけりでしょう。なぜみずほはすべて統合しようとしたのか謎です。
例えばATMなどリテールバンキング用のシステムと、何億円の小切手や手形を処理するコーポレートバンキングのシステムはまったく別物です。
あなたがトレーダーなら高速トレーディングシステムが欲しいでしょう。ほかにも為替のシステム、融資を管理するシステムなど、この業界には無限のシステムがあります。
もちろん、そういったデータも最終的には元帳に記録され、確認されるのです。元帳というのはシステムの大本、そう、ファミコンです。
元帳で最終確認
営業店舗、本社のトレーダーや海外拠点などから"締め"たデータをかき集めます。
僕のような管理系の人間はそれをファミコンで見て、チェックしています。
「あれ?こっちの帳簿より200億円少ないぞ?」
「20億円の取引が予定されてたのに客に渡せていないぞ?」
みたいなことは日常茶飯事です。
ブロックチェーンを業務に使うとどうなるのか
さて、いよいよブロックチェーンのお出ましです。といっても技術的な話ではありません。
お察しの通り、金融機関がブロックチェーンに関心を寄せているのは既存のシステムを破壊するためではありません。
金融機関を縛り付け搾取するネットワークと第三者機関を避けることが目的なのです。
だって送金もクリアリングもめっちゃカネかかるんですよ!
フロッピーとさよならです。"締め"を待つこともなくなります。そしてなにより、莫大な手数料コストを削減することができます。
ほかにも、上記では触れていないカストディや為替の問題も乗り越えられるでしょう。
そういうわけで、世界中の銀行がブロックチェーンを活用しようと考えてるのです。金食い虫はシステム部門ではなく、取引に介在する手間や手数料なのです。