元軍人のTwitter CFO、アンソニー・ノトとは何者なのか
CFOとは何か
成功する企業の裏には必ずCFOがいる。
例えば、GoogleやAppleは、節税やM&Aをはじめ高度なファイナンススキームを用いて高い利益を得ている。
商品が良ければ儲かる、という時代ではないのだ。営業マンやエンジニアも大切だが、私はもっとファイナンスも注目されるべきだと思う。
TwitterのCFO、アンソニー・ノト
そこで、このブログでは凄腕のCFOを少しずつ紹介したい。
ということで今回はTwitterのCFO、アンソニー・ノトを紹介する!同社CFOに就任してまだ2年ほどだが、いま世界で一番注目されているCFOだ。
アンソニー・ノト Anthony Noto
1968年生まれ。ウォートンスクールMBA。Twitter社 CFO。
青年期を指揮官養成所で過ごしたCFO
ノト氏は根っからのファイナンスマニアではなかった。高校卒業後、進学したのは陸軍士官学校 ― 通称"ウェストポイント"だった。日本人にはわかりにくいが、アメリカではエリート中のエリートとされる。
リーダー養成所で24時間鍛えあげる
士官学校は、世界を引っ張るリーダーを養成する場所だ。マッカーサーやアイゼンハワーもウェストポイントの卒業生。
彼らは大学レベルの勉強しながら、24時間鍛錬に励まなければならない。留年は許されないし、娯楽も禁止。
技術やスポーツも完璧にこなす
彼はウェストポイントでエンジニアリングを専攻し、第24歩兵師団にて通信・インターネット関連のミッションに従事していた。
さらにアメフトチームではラインバッカー(ディフェンス)としてスター選手になる。
もう意味不明の超人である。
この時点でCFOのイメージとは大きくかけ離れている。だが、すべての点と点はいずれ線になるのだった。
軍の戦略とビジネスの戦略をミックス
ウェストポイント卒業後、ノト氏は世界最大級の食品会社クラフトフーズ(現モンデリーズ)に入社。通信系を強みにマーケティングなどの仕事をし、ブランドマネージャーとなる。
ビジネスにのめり込む
ビジネスへの関心を深めたノト氏は、会社から車で1時間ほどのところにあるシカゴ大学ビジネススクールに通っていた。
その後、ビジネスにのめり込んだ彼は、ペンシルバニア大学ウォートンスクールに入学し、MBAを取得。
結果的に彼はスーパーマンすぎて、ぐちゃぐちゃなキャリアを築いていたのだった。
そしてゴールドマンサックスへ入社後、ファイナンスの世界に触れて彼の能力が目覚める。
さらなる成長を求め金融の世界へ
ゴールドマンでは、インターネットやメディア・通信業界を専門とした。彼はどんな金融マンよりも通信技術に詳しい。すぐにトップアナリストになり、経営戦略や財務アドバイスを行う。
ウェストポイントで鍛えウォートンで昇華した彼の能力は誰も止められなかった。
驚異的な出世スピード
1999年に入社して2003年にディレクター、2004年にはパートナーに昇格というスピード出世。このとき、まだ30代半ばである。
ウォール街の人間はシリコンバレーには疎いものだが、ノト氏のレポートは常に鋭いものだった。財務諸表だけでなく、技術を理解し、市場を読む能力に長けていたのだ。
それでも更なる挑戦を求め、彼はゴールドマンを卒業する。
全米を熱狂させるスポーツエンターテイメントの世界へ
彼は2008年に世界最大のスポーツリーグ、NFL(ナショナルフットボールリーグ)のCFOとして招かれる。NFLといえばスーパーボウルで知られるように、全米を熱狂させるリーグだ。
ウェストポイント時代はフットボールの名選手だったし、彼以上の適任はいないだろう。
NFLでは、ファイナンス、戦略、レギュラトリーリポートを担当。
ビジネスとしてのスポーツ
精神論オラオラなスポーツ協会員とは違い、彼はスポーツをビジネスとして成功させた。チケットは常に売り切れ、テレビも高視聴率。
最近は日本でもオンラインチケットが普及してきたが、NFLはその先駆者として知られる。なんと、オンラインチケットは転売の仕組みまでオフィシャルにサポートされているのだ。
徹底的に利益を逃さないように作られたビジネスモデル。
彼は財務をベースにマーケティング戦略なども考え、新しいスポーツビジネスのモデルを作った。まさに参謀だ。
GSメディア専門部隊のトップに就任
そしてノト氏は再びゴールドマンにメディア・テレコムグループのヘッドとして招かれる。2013年にTwitterのIPO案件を成功させたことから同社に引き抜かれ、2014年にCFO就任。
前半はここまで。次回はノト氏の辣腕ぶりがわかるTwitterのIPOを振り返ってみよう!
レガシーとの戦い〜投資銀行フィンテック部の現場から
あなたが思ってるほど、フィンテックは楽しいものじゃない。現場はもっと混沌としている。
ペンタゴンにはフロッピーがまだ残ってるって?悪いがここじゃよくある話だ。
フィンテックってのはレガシーを駆逐するか、俺らが食われるかっていうジハードなんだ…!
今回は、今までに僕が経験してきた「レガシーとの戦い」をご紹介したい。
プリンタ付き電卓とエクセルの戦い
彼女は執拗にプリンタ付き電卓にこだわり続けた。
「あたしにはね、こっちの方がいいのよ」そういって彼女はバチバチと電卓を弾いた。彼女の電卓はレシートのような紙がはみ出ていて、計算結果を印字することができる優れものだ。70年代に登場してから、いまだに販売されている。
▼こうゆうやつ
彼女はエクセルの計算結果に懐疑的で、よく電卓で答え合わせをしている。
「エクセルは完璧ではないから、気を付けた方がいい」と僕にアドバイスをくれた。
ありがとう。その通りだ。Sheft+F9を知らない人もいるからな。
このババアの定年まであと数年だ。
ロータスノーツとアウトルックの戦い
「機能が多すぎて意味がわからない」部長はいつも僕にアウトルックの操作を聞いてくる。「間違えて変なボタンを押しそうで怖いんだよ」と語る部長はロータス世代の人間だ。
かつて、ロータスノーツというIBMアプリケーションがあったのだ。特に官公庁や金融機関で多く採用され、都市銀行はすべてロータスユーザーだった。
今ではほとんどアウトルック・Gメールに置き換えられたが、いまだにIロータスはBMに数億ドルの売上をもたらしている。
当社では最近になってロータスは駆逐されたが、アプリケーション自体はまだ残っている。
「あれっ、ロータスで会議室の予約したはずなのに」部長はいまだにロータスの呪縛から逃れられない。
「部長、それアウトルックでできますよ」
「ロータスでできるのになぜわざわざ別のソフトに変えるんだ!」
なぜか怒られた。
チャット機能やクラウドストレージ/ノートを連携させるなんて夢のまた夢だ。
メガバンクの残高照会の戦い
企業であれば、銀行の残高は毎日チェックするだろう。この度、そうした単純労働はすべてベトナムに委託することになった。我々はフィンテックで忙しいのだから。
メガバンのシステムは英語に対応していないが、運よく日本語ができるスタッフをハイアーすることができたしスムーズに業務移管ができると思われた。これでフィンテックに集中できるぞい。
しかし、このささやかなリソース確保も空しく、並行稼働初日にトラブル発生。
「ハロー、ミスターベスト」ベトナムからのコールだ。「ファイルが壊れている」
運用部隊総出でデータの確認をした。問題ないぞ。ベトナムは正常にデータを取得できているはずだ。何があったんだ??
原因は憎き半角カナであった。銀行からのダウンロードデータは半角カナなのだ。
当社のプレミアもののMS-DOSが受信した半角カナは、ベトナムの最新中華コンピュータでは再生できなかったのである。Windowsェ…文字コードェ…メガバンェ!!!!
霞が関との戦い
フィンテックを推進するにあたって欠かせないのが政府との連携だ。フィンテックについては、政府も他国に負けまいと息巻いている。ありがたいことだ。
先日は○○庁から電話があった。規制緩和に伴い、提出書類のファイル形式がいろいろ変るらしい。良い取り組みだと思う。紙は撲滅して、IT化しましょう。
それでは、メアドいただいていいですか。メールをお送りしてエビデンスとしたいのですが
「うちはメールできないんですよぉ」
はて。
「セキュリティの関係で。外部と連絡できる端末は一応あるんですけど、本当に緊急用なので」
メアドゲットならず。遠回しにお断りされる一番キツイパターンだ。ぐぬぬ。
はたしてフィンテックの時代はやってくるのだろうか。
今日も戦いは続く。
フィンテック関係者がガッカリした伊勢志摩サミット
今日の日経平均はガガガっと下げてのスタート!G7サミットに対する失望売りと見られている…らしい。
金融機関でフィンテックをやってる者としてはとっても残念な出来事でした。
なぜなら、これが日本におけるフィンテックの遅れをはっきりと宣言するものだったからです。ゴゴゴ…
フィンテックってサミットに関係あるの?
今回のG7サミットでは、21,22日に財務大臣・中央銀行総裁会議がありました。実はここで、開催国日本に対してある期待がされていたんです。
それが「銀行法改正」。
フィンテック推進のために銀行法を改正しよう!
この改正案は、はっきり言ってしまうと金融機関がIT企業を買収できるようになるようにするというもの。
これが実現できれば、フィンテックベンチャーがどんどん生まれるし、銀行ももっと早く新しい技術を取り入れて進化していけるようになるはず。
フィンテック先進国への第一歩!
だから多くの金融関係者、フィンテック関係者は先週末の会議に対してとても期待していたのです。
バズワード止まりのフィンテック
現状のフィンテック(と呼ばれているもの)は、単なる家計簿アプリです。ビットコインもまだまだ中央銀行には敵いません。
個人レベルだし小額すぎて社会へのインパクトゼロ。。ただのバズワードと思われても仕方ありません。
そもそも今のままフィンテックを推し進めることがオカシイと思います。現状金融システムの「決済」が圧倒的に遅いからです。ここを改善しない限り、どんなに金融まわりのテクノロジーが発達しても有効ではないのです。
ちょっと話が逸れますが、そのことにも触れたいと思います。
今の金融システムでは3日もかかる決済
金融業界は常に最新技術に投資しているので、トレーダーは高速で株の売買が可能ですし、常にマーケットはモニタリングされています。
ですが、決済は相変わらず日銀に握られ、「一旦締めてから差額を交換する」というやりかたをとっているんですね。
そのため、どうしても1営業日必要。さらに海外取引や為替に関わるものはサンチェイス的に世界中に影響していくので、プラス1営業日。
今どき、データのやりとりに最低2日もかかっている!
これがフィンテックのボトルネックになっている。もしも決済が高速で実現できれば、エンタープライズ領域のファイナンスが活発になるでしょう。
金融機関の人間としては、まずは決済を刷新すべきだと思います。仮想通貨はその次じゃないでしょうか。
市場は未来を予言する
最後に、なぜ今日の日経平均にガッカリしたかという話。
市場は未来を予言すると言われているんです。
第二次世界大戦での日本国債価格の額面割れなどは日本の敗戦を見通していたと言われていますし、金融機関は政府よりも早く情報を仕入れていたと言われるほどです。
だから、今回の日経平均ははっきりとG7に対する失望を表していたんじゃないかと思うのです。日本のフィンテック後進国への予言にならないことを祈るばかりです。。
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